フランス人の旦那様と4歳の息子さんと、パリで暮らすマダム愛さん。日本と違う価値観の中で生きる上でわかった、大切なこととは。(写真=iStock.com/wundervisuals)

フランス人あるある。席の譲り合いが当たり前

 先日、バスでこんなことがありました。

 とあるバス停で、多分80代後半と思われる、とても高齢のご婦人が乗ってきたのです。あいにくこの日は、どこの席も埋まっていて、2席あるシルバーシートにも、これまた80代後半と思われるムッシュとマダムが既に座っておりました。

 彼女が乗ってくるやいなや、すぐに席を立ったのが、シルバーシートに座っていたムッシュ。私はいいから、ここに座りなさいと彼女に席を譲ったのです。それに気づいたもう一人のマダムが、いや、私の席に座りなさいという。そう、80代と思われる高齢の方3人で、席の譲り合いを始めたのです。

 もちろん、彼らの周りの人も慌てて立ち上がり、いや、こちらに!いやいやこちらに!と、席を譲ろうとしたけれど、乗ってきたばかりのマダムが皆に向かってこう言ったのです。

 「皆さんお心遣いありがとう。でも私は3つ目のバス停で降りるから、座らなくても大丈夫よ!」と。

 それに対して、「あ、私も同じバス停で降りるんですよ」と答えるムッシュ。

 でもってそこからが大変。

 じゃあ、やっぱりあなたが座りなさい、いやあなたが!と、ずーっと譲り合い。

 すぐ近くで彼らを眺めていた私は、この先いったいどうなるんだろうと見守っていたのですが、この人たち、特に高齢の3人は、どんどんと話が盛り上がって行き、さらには降りるバス停が同じで、実は近所に住んでいるということがわかったせいか、最後は一緒にお茶でもしようとなり、同じバス停で皆が降りて行きました。3駅分、結局誰一人座ることがなく……(笑)。

実はフレンドリーなフランス人

 こういうことが起きるのは、いかにもフランス人だな~と、見ていてほのぼのしました。

 なぜならフランス人はとてもフレンドリー。人と人とのコミュニケーションを大切にし、見知らぬ人に気軽に声をかけたりジョークを飛ばしたりして、仲良くなってしまうことが多いからです。

 パリに来たばかりのとき、パリジャンは冷たい!なんていう噂を聞いていたので、最初は少し怖く、店員さんや道端などで突然フランス語で何か話しかけられても、ついつい警戒してしまっていたのですが、フランス語を理解できるようになった今、彼らが話しかけてくるその内容はだいたい世間話かジョークだとわかり、パリジャンって良い人が多いなと思うようになったくらいです。

 なので、バスで皆が仲良くなってしまったというのは決して珍しいことではなく、パリではあるあるのエピソードなのですね。

 そしてさらにもう1つ、この“席を譲る”という行為も、フランス人の性格をよく表しているなと思います。

 バスや地下鉄でパリジャンたちは我先にと言わんばかりに席を譲ります

 私が妊婦だったときも、皆が競い合って席を譲ってくれて、どの人のオファーを受けようか悩んだこともあるくらい。そしてその度にこの街の人たちはなんて優しいんだ! と感動したものです。

 日本では、席を譲りたくないがためにたぬき寝入り……なんて人がけっこういたりしますよね。かく言う私も日本にいたとき、満員電車でやっと座れた席はやっぱりどうしても譲りたくないと、まわりと目が合わないようにした経験があります。

 これに関しては、日本人はなんて冷たいんだ!とか、そんな意見もあるかとは思うのですが、でもそれなら、パリジャンが日本人と比べて優しいのかといったら、それはそれで違う気がするのです。これは優しさや思いやりだけが起こす行動ではないな、と。

 そもそも日本の人たちは長時間働いて疲れている人も多く、さらには電車の混雑度もフランスとは比べものにならないくらいすさまじい。通勤時間も長い人が多いので、空いた席は、そりゃ~もう、希少価値がありすぎて、せっかく手に入れたら譲りたくなくなるってもんですよ。

 その上、日本の方はビジネス用の硬い革靴をはいていたり、ヒールの高い靴を履いているので、パリジャンよりも断然疲れやすい環境にいるのだと思います。

 でも、パリに来て気づいたのは、そういう物理的感覚の違いで席を譲る譲らないの差があるのはもちろんだけれども、実はもう1つ大きな理由があるということ。

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