「一緒に暮らす人にストレスを与える片付け」とは何でしょう? やまぐちせいこさんによると、それは些細で無意識な、時には本人は善意でやっていることなのだとか。

“したい”と“できる”と“しなさい”

 「あなたはプロかもしれませんが、あなたの言う通りになるんですか?」

 個人宅のお片付けサポートへお伺いするとき、ご家族に立ち会っていただくことがあります。この日は、奥様からのご依頼で、立ち合いはご主人。子供部屋の物の配置に関して、少し興奮気味にご主人からこの言葉を投げかけられました。

 時をさかのぼること、前日。

 子供部屋が物置状態になっていることにお困りになっていた奥様からのご依頼で、子供部屋を中心とした片付けをしました。1日でしたが奥様の努力もあり、見違えるほどに子供部屋が片付きました。

 15時に帰宅したお子様が部屋を見ると「私のお部屋がキレイになった!」と、とても喜びながら、それまで眠っていたお子様本人の“ああしたい・こうしたい”の思いが溢れて言葉として色々出てきました。

 その娘さんの気持ちと言葉を、翌日の立ち合い時にご主人へ伝えました。

 「『子供部屋で勉強をしたり、お人形を飾って玩具の整理をしたりしたい』とのことです。本人が自分はこうしたいと自分の意志が動いているときに環境を用意することと、親の都合で【こうしなさい】と環境を用意するのでは意味合いも違います。片付けのプロとして、本人の意思があるのでしたら、そちらに合わせることを提案します」

 そして帰ってきたのが。上述の言葉でした。

 「あなたの言葉通りに娘が行動すると言えますか?」

私の好きと家族の好きは違う

 片付けのご依頼がある中で、家族の意見の仲介人になる場合が度々あります。

 片付けのプロだから、素人だからという問題ではなく、家族と一緒に生活を共にする場合は家族の意見が重要です。

 私自身も覚えがあります。ミニマリスト・持たない暮らしと呼べるくらいに物を減らした頃のこと。まだ物が紛失する・見つからない……というトラブルがありました。物を減らす前は、毎日・毎朝。減らしてからは激減し、月に1回。

 それでも月に1回は、「こんなにモノを減らしてもまだ失くしモノをするのはなぜなの?????」という日がありました。

 理由をしっかり家族に聞いてみると、家族なりの意見や気持ち考え方、物の見え方、感じ方が沢山出てきました。目からウロコの意見もたくさんでした。腰を据えてジックリ家族の意見を聞いたことでの発見は私自身、相手の話を聞いているようで聞いていなかったことでした。

 どこか“自分のほうが片付けできる。家族はできない”と、どちらが上で、どちらが下。という見方をしていたのかも……という謙虚さの無さに気づかされました。

 家族の意見の中には、

 「えー! そんなことしたらインテリアも台無しだし、私はそれ、好きじゃない」

 「そんなことされたら私はストレスなのに嫌なんだけど……」

 と、思う内容も沢山ありました。

 しかし、ぐるりと視点を変えて考えてみたとき、

 「私は家族の意見通りに変えるとストレスだけど、現状、私の意見に合わせてくれている家族は同じようにストレスで、我慢して合わせてくれているのかもしれない」

 そう考えたときに、このままではいけないと感じました。

 グッと私の「こうなのに」は飲み込んで1度キチンと全部家族の意見通りにしてみよう。そう思い、意見が一番飛び出たキッチンを変えました。

 すると、それまで定位置に戻らなかったモノが元の位置へ戻りだし、私以外の家族でも片づけやすく、使いやすいキッチンが実現しました。

やったこと

・モノを減らす

・毎日使う一軍はゴールデンゾーン(目線から腰下)に

・ワンアクションで取り出しやすく

・モノの住所を決める

 どれも片付けにおいて鉄板と言えるルールですが、それ以上に大きな意味を持つものは、家族(使用者)の意見に耳を傾けることです。

 モノは右から左へ動かすだけですが、人の話に耳を傾けることは、簡単でありながらも一日体を動かし続ける以上に難しいことでもあります。なぜならば、自分には自分の価値観がありますし、それと違うものが出てきたときに自分の価値観を否定されたような気持になったり、感情的に受け入れられないこともあったりするからです。

娘さんの意見を伝えた結果は……?

 さて、話をお片付けサポートの現場へ戻します。

 「あなたの言う通りに、娘が行動すると言えますか?」

 ご主人の言葉に対し、次のようにお答えしました。

 「それは、私は断定できません。ただ、片付けのプロとして言えることは、

 失敗するチャンスを与えるということも、子育てではないでしょうか? ということです。

 こうしたい! と思っていても行動がついていかないことは、大人でもあります。子供さんでしたら、なおさらでしょう。ご主人のおっしゃる通りです。

 ただ、1点。

 本人の意思があり、環境を提供できるのにチャンスを奪えば、いつ、娘さんは【自分で自分の持ち物を管理する】ということを学べばよいのでしょう?」

 ご主人のご意見も、もっとも。ですが、部屋の使用者は娘さんです。私の意見というより、娘さんの意見や気持ちを伝えることしかできません。

 その場は保留となったのですが、その翌日の夜に奥様からメールをいただきました。

 一人で寝るのが怖いと言っていた娘が、片付いた部屋をみて、「ここにお布団を敷いて寝る!」と言い出し、ベッドを動かしました。最初だけかと思いきや、翌日も、またその翌日も。

 あんなに怖がりだった娘が一人で部屋で寝るようになりました。

 今回の片付けで、やまぐちさんが言われた「片付けはコミュニケーションなんですよ」という意味が分かりました。

 本当にありがとうございました。

片付けで気持ちを伝えよう

 私が片付けの現場に入り、家族の意見がぶつかり合い、一触即発……という場面は何度かありました(笑)どちらの意見も分かります。ただ、私自身の失敗の経験として言えるのは“家族の意見の反映されない片付けは、家族を不幸にする”ということです。

 言葉で人を傷つけることもできれば、物の置き方や、物の扱い方などで、言葉で傷つける以上に心をえぐることもできます。しかし、視点を変えれば、物を通して家族への愛情や信頼を伝えることは可能なのです。

 年末年始は特にお片付けシーズンです。

 家を片付けてすっきりとする以上に、ご家族へ愛情や信頼を伝える手段として片付けてみてはいかがでしょうか?

 新年の始まり。

 2019年が、皆様にとって、うんと良い一年となりますように。