体と心の疲れを切り離そう

 疲れを撃退するにはまず、それが単純な「体の疲れ」なのか「心の疲れ」なのかを見極め、対策を考えることが必要だ。

 休息不足と栄養不足からくる「体の疲れ」は、原因がわかっているだけに回復の手立て自体ははっきりしている。寝ること、食べることだ。疲れているときは筋肉も凝り固まっているから、軽い運動やマッサージ、整体によっても、体がほぐれて疲れがとれるように思う。

 仕事が楽しい時期、一時的に忙しい時期は人生の中にあるとは思うし、忙しさ自体が悪いことでもない。でも体のサインに気づけないほど疲れてしまえば、多分仕事の上でもマイナスになっているはずだ。

 「心の疲れ」はもう少し複雑かなと思う。

 若い方が疲れているというときは多分、心が疲れている。体の疲れは若いほど早く回復するけれど、心の疲れは若いほど抜けにくい。流したり忘れたりできる年長者のほうが、むしろ回復が早い。

 メンタルの疲れは多くのところ、人間関係の疲れなのではないだろうか。ワンオペ育児疲れ、SNS疲れなど昨今の疲れはあるけれど、人間関係が良好なら、どちらも忙しさの中に、ある程度疲れを癒す場面があるものだ。人とコミュニケーションがうまくとれないということは、もっとも人にストレスを与え、疲れさせるのではないかなと思っている。こうした疲れは休息では治らない。

 ただ体の疲れと違い、つける薬がないのも心の疲れの特長。どう回復できるかも、人それぞれで、こうしたコラムだけでは無責任に書けない。そこが、ちょっとやっかいだ。

山椒と細切り豚のアロマスープ(『おつかれさまスープ』p60より)/スパイスで吹き飛ばない疲れだってある。
山椒と細切り豚のアロマスープ(『おつかれさまスープ』p60より)/スパイスで吹き飛ばない疲れだってある。

ほんとうに心から疲れてしまったときは

 疲れ対策のひとつとして『おつかれさまスープ』では、疲れを癒してくれるスープを紹介したけれど、正直なところ、心の底から疲れ切って、何もやる気が起きなくなってしまっている人に、この本を私が手渡すことはないと思う。

 心身の疲れを癒すためには様々な方法がある。アロマテラピーや、サプリメント、枕や寝具、音楽、ヨガやストレッチ……疲れている人向けのグッズや方法はネットをちょっと検索するとごろごろ出てくる。ちょっと怪しいものもある。

 でも、ギリギリまで疲れてしまった人にとっては、これ以上疲れさせるものはもちろん、疲れを癒そうとするものすらも、邪魔になる。

 必要なのは、アロマでもスープでもない。空白の時間と空間だ。自分に「何もしないこと」を許して、待つ。休もう、とすらしなくていい。ただ、自分の中の時を止める。

 空白の中に一定期間いると(どれぐらいかは人によるけれど)、心は自然に動きだす。その心が望むものを与えてあげれば、疲れは癒される。それがスープだったりすることは、あるかもしれない。

 疲れているという若い人たちを見ながら、そこまで疲れる前に、体と心をしっかり休めてあげたいよね、母親世代である私はつい思ってしまうけれど、そうはいかないことばかりだから、疲れている人が増えている。

 あったかいスープで栄養をたっぷりとって、お風呂に入ってぐっすり眠る。寒いけれど外に出て歩く。お金もかからない誰にでもできるそんな方法が、実はお疲れさまな人々にとって一番必要なこと。疲れをためない、長引かせない。そういうときに、この『おつかれさまスープ』は、きっと役に立つはずだ。

 頑張る人たちの心に留めておいてもらえたらと思いつつ、スープの鍋をかき混ぜている。

アボカドとえびのポタージュ(『おつかれさまスープ』p90より)/「好き」が浮かび上がってくるまで、ゆっくり。
アボカドとえびのポタージュ(『おつかれさまスープ』p90より)/「好き」が浮かび上がってくるまで、ゆっくり。
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