2018年はたくさん本が読めた1年ではなかったのですが、好きな作品に出会えた年でした。何度も読んだ作品をご紹介します。

 こんにちは、編集部のいとうです。突然ですが、みなさんがよく読む本のジャンルはなんですか?

 私は断然、漫画です。バトルもの、ギャグ、SF、エッセイ、恋愛……ジャンルの見境なく面白そうだと思ったら比較的軽率に手を出します。

 作品によって良さが違うので、なかなかマイベストは選べないのですが、2018年に購入した漫画の中で最も多く読み返した作品が竹内佐千子さんの『赤ちゃん本部長』(講談社)です。web連載中で、単行本も刊行されています。

私は電子書籍で読んでいます
私は電子書籍で読んでいます
あらすじ

 株式会社モアイに勤める武田本部長47歳。ある日突然朝起きると、頭の中はそのままで身体が赤ん坊という状態に……。どうやら生後8ヵ月ぐらいの大きさらしい。坂井部長40歳、天野課長35歳、西浦平社員28歳の社内育児がスタートです!

 (連載サイトより)

 ……と、かなり破天荒な設定です。けれど、登場する人々は私達の隣にいても不思議ではないと思う人たちばかり。たとえば、

 今は独身だけど、西浦くんと同い年の娘がいる武田本部長

 おおらかな妻と二人暮らしの酒井部長

 プライベートではゲーム実況を配信する独身主義の天野課長

 同性パートナーと娘の三人で暮らす西浦くん

 「男女が結婚し、子どもをもうけることが幸せ」という考えが古いと気付き、アップデートしようともがく橘部長

 漫画の中で一人ひとりの詳しいバックボーンは描かれてはいませんが、それぞれ異なった価値観をもって生きてきたんだな、と感じられます。そのため、随所に視点の違いから生じる会話や独白が自然と挟まってきます。

 それに毎回ハッとさせられるのです。

 特に印象深いのは、独身を貫く天野課長に同性愛者の西浦くんが、「課長は普通に結婚できるのに、それを選ばないのはさみしくないんですか?」と聞くシーン。

 天野課長は「自分が満たされる生き方を探した末にたどり着いたのが独身主義」であり、「自分のスタイルをさみしいと思われることがさみしい」と返します。

 言葉を失う西浦くん。少しの間をおいて「そうか……そうですよね」と謝ります。

 幸せやさみしさの定義は人それぞれで、自分の定規で他人を測ることはできない。性的指向がマイノリティの西浦くんは恐らく、それを強く実感してきた人物だと思います(実際に、別の回では同性パートナーとの子育てを他の社員に異質なものとして見られるシーンがあります)。

 彼にこの質問をさせることで、どんな立場でも必ずバイアスがあることがわかりやすく伝わってきます。

 性的指向や生き方が多様な今(本当は、昔から多様なのだと思いますが)、いきなり偏見はなくせないし、偏見を持っていることすら気づけないことのほうが多いと思います。そのことを自覚しながら、誰もが暮らしやすい世界を作るには、どうすれば良いんだろうか? とか、自分が西浦くんのような発言をしてしまったら、私はどんな対応を取れるだろうか。そんなことを読むたびに考えてしまいます。

 と、こんな風に書くとなんだか説教臭い漫画だと思われてしまうかもしれませんね。でも『赤ちゃん本部長』のすごいところは、こういった話題が流れでストンッと発生して、それぞれの考え方や生き方が否定されずに、サラッとメインの話に流れていくいこと。

 あくまでもストーリーの本筋は本部長をとりまく環境なのです。

 大人の頃とのギャップに戸惑いつつ堂々と仕事をこなす本部長、パソコンのキーボードに手が届かないので音声入力に変えてあげる部下、上司の赤ちゃん化に驚きつつも可愛がる社員たち。本部長の意外な過去も明らかになり……と、基本はギャグテイストで楽しく読める作品です。

 実用性はありませんが、なんだか停滞感を抱いている時やモヤモヤした時に読むとスッキリします。

 みなさんが最近出会った作品で、良かったなぁと思うものは何でしょうか? また、今年も新しい作品との出会いを期待したいものですね!

Writer PROFILE

  • 伊藤 桃子(翔泳社)さん

    みんなの暮らし日記編集部員です。ビールが大好きです。

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