骨董市や器のお店で目にする骨董の器が気になるという方へ。骨董は見て楽しむだけでなく、使ってこそ良さが生きるんだそうです。

祖父の蕎麦猪口

祖父が使っていた
祖父が使っていた

 底に祖父の名前の一文字をとった「文」という文字。仮に祖父が使い始めたものだと考えると、生きていれば100歳を迎えていた祖父が若い頃、おそらく50年~80年くらい前に使っていた蕎麦猪口です。

 この蕎麦猪口が、時を超えて今わが家にあります。

 もう10年以上前、福井県の母方の祖母の葬儀がありました。葬儀の後親戚一同が昔話に花を咲かせる中、母と2人でこっそり抜け出し、家の周囲を散歩しました。

 「何か面白いものがあるかもよ」という母に連れられて入った祖父母の家の倉庫で、農具やいらなくなった家財に紛れて、この蕎麦猪口を見つけたのです。

 当時少しだけ骨董に興味があった私はこれを手に取りじっくり眺めた後、「まぁ、たくさん出回っていたものだろうから価値云々ではないよね」と元に戻そうとしました。

 でも一度手にしたその蕎麦猪口は見れば見る程手に馴染み、底の「文」という文字も含めてじんわりと愛着が湧いてきます。そのうち手放すのが惜しくなった私はいくつもあった蕎麦猪口の中から5つを手に取り、祖父母の家に戻りました。

 「これ、欲しいんだ」という私に、叔父叔母は「そんなのいくらでも持って行きな。もう使わないから」とあっけなく言い、晴れてこの蕎麦猪口がわが家にやってきたのでした。

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