フランス人の旦那様と4歳の息子さんと、パリで暮らすマダム愛さん。フランス流子育てに学ぶことが多いと言います。今回は「フランス流の説明する育児」。一体どんな様子なのでしょうか。

赤ちゃん連れ。バスが事故で緊急停止!

(イメージ写真=iStock.com/LeoPatrizi)
(イメージ写真=iStock.com/LeoPatrizi)

 息子がまだ生後半年くらいだったときのこと。

 彼を連れて出かけていた時に、乗っていたバスでトラブルが発生したことがありました。バスが自家用車と接触し、相手の車のガラスが壊れて緊急停止してしまったのです。

 平日の午前中だったこともあり、バスに乗っていたのは数人程。

 私はバスに乗ってすぐ、ベビーカーを所定の場所に起き、息子を抱っこしながら席に座っていたのですが、この緊急事態にどうしたら良いのかわからず、右往左往してしまいました。

 なぜなら、バスが止まった場所の横には、駐車している車があり、ベビーカーを降ろせる後ろの大きな出口のドアの前が完全にブロックされてしまっていて、降りられる状態ではなかったのです。

マダムが助けてくれた!

 困り果てている私に、一人の年配のマダムが来てこう言いました。

 「事故でバスは動けないから、前の小さな出口から出るしかないわ。ベビーカーは小さくなるの? 皆で手伝うから安心しなさい!」と。

 ああっ!助かる!

 それじゃ、私は息子を抱っこして前から降りればいいのね!!!

 でも、とりあえずベビーカーを小さくする方法を皆に説明するために、抱っこしている息子をどうにかしなければ。一人で椅子に座らせたら落っこちちゃうかな? でも、抱っこひもは持ってきていないし……。だからと言って、ベビーカーに座らせるわけにはいかないし……。

 やむなくベビーカー近くの広い座席に息子を一人で座らせようとしたとき、先ほどのマダムがこう言ったのです。

「赤ちゃんに、きちんと説明しなさい!」とマダム

 「あなた! 息子さんは赤ちゃんでも今の状況が普通でないのはちゃんとわかっているのよ! ただ座席に座らせるなんて、息子さんがかわいそうじゃない! 今の状況をきちんと説明し、お母さんの考えを伝えないと赤ちゃんだって不安になるのよ!」と。

 そしてそのマダムは、椅子にいる息子のほうに行き、彼の目を見ながらしっかりとした口調でこう説明し始めたのです。

 「いい? 今、あなたの乗っているバスは、事故を起こしたの。このバスはもう当分動かないから、私達は今からこのバスを降りないといけないの。そのためにはまず貴方の車(ベビーカー)を私達で小さくして、前のドアからおろすわ。貴方のママはその手伝いをしてもらうけれど、準備ができたらすぐに彼女はここに来て、貴方を抱っこして一緒に降りるから、安心しなさいね。貴方が心配することは何一つないし、これからも決して起きることはないわ。約束する!」と。

 そこから皆でベビーカーを下ろしてくださり、私は息子と一緒にバスを降り、とりあえずその場を切り抜けることができたのですが、この出来事は後々、私にずっと影響を与えました。

 なぜならこれこそまさに、”フランスの子育て”の中で大事にされていることの1つであり、それを身を以て体感した出来事だったからです。

フランス人は、子どもを小さな大人として扱う

(イメージ写真=iStock.com/SbytovaMN)
(イメージ写真=iStock.com/SbytovaMN)

 フランスの子育ての特徴の1つに、フランス人は子供を小さな大人として扱う、ということがあります。

 どんな小さな子供が相手でも、その人のアイデンティティを尊重し、大人と同じように対応をするべきだという考えです。

 そしてその考えの中の1つの行動がこの、「説明する」ということです。

 この一件でもわかるように、相手が赤ちゃんだから、子供だから、どうせ言ってもわからないだろうとは決して思わず、どんなことでもしっかりと説明してあげるべきだと考えられているのです。

マダムが説明してくれたから、息子は安心して待っていられた

 フランスで出産をし、子育てをしていた私は、もちろんこのフランス流の考え方を知っていたのですが、バスでの状況に私はパニックになり、とてもじゃないけれど、息子に今の状況を説明しようなんていう考えが浮かばず、とにかくその状況を抜け出すことに必死になっておりました。

 でも、このマダムに言われ、ハッとしたのです。

 まさにその通りだと。

 言葉が話せない分、赤ちゃんと言うのはママの表情を読み取るのがとても上手だと言います。そんなママがパニックな状況なのを、赤ちゃんはわからないはずがないのです。

 なので私は何よりも先に、息子に状況を説明して安心させるべきだったとすごく反省しました。

 この時に息子が大人しく待っていてくれたのは、きっとこのマダムの説明のおかげで息子は安心感が得られたから。今でも彼女にはとても感謝をしております。

生まれたばかりの赤ちゃんにも、説明をする

(イメージ写真=iStock.com/encrier)
(イメージ写真=iStock.com/encrier)

 6ヶ月の赤ちゃんに説明!?なんて思うかもしれませんが、フランス人は生まれたばかりの赤ちゃんの時からこのように、説明する子育てをします

 じゃあ、どんな時に説明の子育てをするのかと言いますと、それはもう、いろいろな場面。

 ご飯の準備をするためにその場を離れる時は、自分は今からご飯を作ることを説明してから去りますし、赤ちゃんをお風呂に入れる時は、今からお風呂に入れてこんなことをするよと説明したりします。

 赤ちゃんが何か食べ物以外を口に入れようとした場合は、ダメとは言わず、これは〇〇のために使うもので、お口に入れるものではないのよ、と、しっかりと伝えるのです。

夜泣きする赤ちゃんに、「今は夜だから、皆が寝る時間なんだよ」

 この「説明する」子育ては、例えば生まれてまもない赤ちゃんが夜泣く時にも使います。

 生後すぐの赤ちゃんはだいたい3~4時間おきにミルクを欲しがって、泣きますよね。それが昼であろうが夜であろうがおかまいなし。なので夜中に起こされると思うのですが、その時に日本は、はいはい、お腹がすいたのね、と、ミルクをあげるパターンが多いかと思います。でも、フランスだと、夜中にベッドで目を覚ました赤ちゃんにはすぐにミルクをあげません。

 まず説明するんです。

 「今は夜だから、皆が寝る時間なんだよ。」と、さらには「静かだから不安なの? それはね、パパもママも夜だから寝ているだけだよ。だから安心して君も寝て良いんだよ。お腹がすいたの? 皆は起きたら朝ごはんを食べるんだよ。夜中はご飯を食べる時間じゃないんだよ etc etc 」と言った感じで、詳しく状況を説明してあげるのです。

人間社会で生きていくためのルール。だから教えてあげるべき

 この「説明する」と言うフランス人の行動は、相手が赤ちゃんであっても、人間社会で生きてゆくためのルールをきちっと教えてあげるべき。それが赤ちゃんのためでもある。と言う考えがあるからだとも言われております。

 もちろん最初はそんな説明をしながらも、最終的に夜中はミルクをあげることになるのですが、この言葉を繰り返して行くうちに、目が覚めてしまった場合でもミルクを飲まずにそのまま、また眠りに入っていくことが徐々に増えていきます。

 そしてしまいには朝まで寝るようになるのです。

 そしてフランスの親たちは「うちの子、夜がわかるようになったわ!」と、夜泣きが終わったことではなく、夜を理解したことを喜ぶのです。

 生後まもない赤ちゃんがそんなのわかるはずないじゃない!と思われるかもしれませんが、でも実際、フランスの赤ちゃんは平均して生後2ヶ月で朝までぐっすりと眠るようになると言われております。

 実際にうちの息子も1ヶ月半で朝まで眠るようになりました。

「説明する育児」実践中です!

 こんな感じで、生まれてからすぐに”説明する”子育てをしてきた私。けれどもさすがにバスの件ではパニックになり頭がまわらず、マダムに言われるまですっかり忘れてしまっておりました。

 でもこの一件で、私はさらに”説明する育児”の大切さを実感し、それ以降、できる限り実行してきております。

 今現在4歳半の息子が降りますが、もちろん、今も説明する育児を継続中。

 赤ちゃんの頃とはまたちょっと違う感じでの”説明する育児”にはなりましたが、息子は私の言うことをなんでも理解してくれるし、理解力のある立派な子だな~と、親バカ目線で思うことも多々あります(笑)。

 フランスの説明する育児、皆様はどう思われますか?

 でも、あまりネチネチと説明すると、理屈っぽい面倒な親と思われそうなので、息子が大きくなるにつれ、その塩梅がなかなか難しいな~と思ったりもするんですけどね。一人息子に嫌われたくないですからね(笑)。