イギリスはDIY発祥の地といわれているほど、住まいに対して思い入れが強い国民性。でも実際住んでみると、ちょっと驚くことも多いんだとか。イギリス在住のMarchさんが教えてくれました。(トップイメージ写真=iStock.com/Ozgur Coskun)

 少しずつ春の兆しが見えてきましたね。

 イギリスでも、ここ数日、1998年以来の気温上昇で例年より早く、アーモンドの花が一気に花開いてきました。

これがアーモンドの花なんです。桜とそっくり
これがアーモンドの花。桜とそっくりなんです

 イギリスに来たばかりの頃は、桜の花と見間違えたこのアーモンドの花。今では、アーモンドの花が咲き始めると、春の訪れを感じるようになりました。

 アーモンドの木は、街路樹として植えられていることが多く、我が家のすぐ目の前の道路にも何本も植えられていて、この時期の楽しみの一つとなっております。

アーモンドの花は街路樹として植えられています
アーモンドは街路樹として植えられています

 さて、今回はイギリスのDIY事情についてご紹介してまいりましょう。

DIY発祥の地・イギリス。自分たちでやるのは当たり前

 日本でも昨今はDIY(Do it yourself の略。自分自身で家の工事や改装などをすることをいいます)ブームで、数年前には森 泉さんなどを筆頭に、「DIY女子」なんていう言葉もできたほど、女性の間でも、DIYが流行していると聞きました。

 このDIY、発祥はまさしくここイギリスと言われていますが、イギリス人はとにかく住居に関しての思い入れが強い国民性。

 家を買うと、何年もかけて自分たちでちょっとずつリフォームしながら、自分たちの住みやすい家へと変えていくのです。

家を自分好みに変えていくイギリス人

(イメージ写真=iStock.com/AndreaAstes)
(イメージ写真=iStock.com/AndreaAstes)

 これは、前回の記事でもちょっと触れましたが、イギリスの住宅は、地震のある日本と違い、100年前に建てられたお家も珍しくありません。定期的に家の手入れをする必要があるのです。

 また、同じところにずっと住み続けるのではなく、生活スタイルに合わせて、ヤドカリのように家を移っていくのが普通なので、前に住んでいた住民のテイストの残った家を自分好みの物に変えていく必要があるのです。

 自分でできることは自分でやる! ペンキ塗りや壁紙貼りなどは自分たちでやるのは当たり前。

 さらに器用な人であれば、床貼り、キッチン、などなど、あらゆる場所を自分たちで直してしまう人たちもいるということです。

充実しているDIYショップ

 DIYが決して珍しいことではないここイギリスでは、DIYショップも、非常に充実しています。

ヨーロッパ最大級を誇るDIY専門ショップ B&Q
ヨーロッパ最大級を誇るDIY専門ショップ B&Q

 売り場面積も非常に広く、一般向けとは思えない品揃え(*もちろん、プロのリフォーム業者や大工さんなんかからも利用されているショップです)。

ペンキの種類も半端ない量です
ペンキの種類も半端ない量です
壁紙も選びたい放題
壁紙も選びたい放題
ドアだって、DIYで自分たちで取り付けます
ドアだって、DIYで自分たちで取り付けます
キッチンシンクだって選びたい放題
キッチンシンクだって選びたい放題
工具もプロ仕様のものまで取り揃えています
工具もプロ仕様のものまで取り揃えています

 こういった充実したDIYショップに加え、ほとんどのイギリス人家庭で、一家に一冊はあるのでは?と思うのが、DIYのガイドブック。

我が家にも御多分に漏れず、分厚いDIYの本が2冊もあります
我が家にも御多分に漏れず、分厚いDIYの本が2冊もあります

昔の住人たちがDIYした痕跡が……!?

 さて、このDIY!! 実はちょっと曲者でして……。

 今の家に移り住んで今年で早10年を迎えるのですが、我が家でも引っ越してきた当初から少しずつリフォームを繰り返し、今ではやっと自分たちなりのマイホームができあがってきました。

壁の色はほぼ自分たちで塗り替えました
壁の色はほぼ自分たちで塗り替えました

 我が家は、イギリスでは割と主流の、1930年代に建てられた家なのですが、私たちの手に渡るまでには、いろいろな住人がこの家で暮らしていたと思われ、壁紙をはがしていくと、別の壁紙が幾層にも現れたり、家のあちこちにこの家に過去住んだ人たちが施したDIYの足跡が見受けられます

 器用な人ばかりが手掛けていてくれたらいいのですが、中にはそうではない方が果敢にもDIYに尽力した後が……。

曲がって取り付けられたコンセント

 例えば、我が家のベットルームのコンセント。

 酔っ払いながら取り付けたのか、かなり曲がっております……。

本来なら点線の部分にコンセントが取り付けられなければならないのですが、かなり右下がりに取り付けられています
本来なら点線の部分にコンセントが取り付けられなければならないのですが、かなり右下がりに取り付けられています

 照明のスイッチも、微妙に曲がって取り付けられておりました。

お分かりになりますでしょうか? 微妙に曲がった位置で取り付けられている照明スイッチ
お分かりになりますでしょうか? 微妙に曲がった位置で取り付けられている照明スイッチ

照明のスイッチはどこ?

 また、中には、こんな照明スイッチも……。

 リフォームにつぐリフォームで、どこかの段階でスイッチの上にドア枠がかぶさってしまったのか、そもそも、ドア枠の大きさを考えずに照明スイッチを先に取り付けてしまったのか?

ドア枠がかぶさってしまっている照明スイッチ
ドア枠がかぶさってしまっている照明スイッチ

 また、ボックスルームと呼ばれる小さな部屋があるのですが、そこの部屋の照明スイッチが……ないのです!!!

 この家を買ったばかりの頃、夜、暗がりの中お部屋に入っても照明スイッチが見当たらず焦っていると、こんなところにつけられておりました……。

 開けたドアの裏側……(笑)。

部屋のドアを開け、部屋の中に入り切ってから再度ドアを開けないと照明スイッチを押せないような作りになっております
部屋のドアを開け、部屋の中に入り切ってから再度ドアを開けないと照明スイッチを押せないような作りになっております

 これも何も考えずにDIYで扉を付けてしまった結果、こんな不便なことになってしまったようです。

文化が違うと、住居も変わる

 さて、実はイギリス住宅と日本の住宅とでは文化の違いから「作り」が違うものがあります。

 下の2枚の写真に、英国ならではの作りのものが写っているのですが、それが何かお分かりになりますでしょうか?

 まずは、我が家のリビングルームを廊下からのぞいたシーンがこちら。

 またこちらの写真は、ゲストルームを廊下からのぞいたシーンです。

 実は扉の開く位置が日本とイギリスでは違うのです(全ての住宅に当てはまるとは言い切れません。一般的な話です)。

 日本住宅の場合、部屋の扉は、家の壁側に向って開くようになっているところがほとんだと思いますが、イギリス住宅では、部屋の中心に向かって開くようになっているところが多いと思います。

 これは、日本はできるだけスペースの確保が優先事項なので、扉を開いた場合、壁に向って開いた方がスペースをより有効的に使うことができるということでしょう。

 しかし、イギリスの場合、部屋の中心に向かって扉を開くことにより、扉が盾となり、部屋の中が外の人間の視界にすぐには入ってこないようになっています。

 (*上の2枚の写真を見て頂いてもわかる通り、扉を開ける人は部屋の入口付近しか視界に入らないのがわかると思います。)

 これは昔、使用人などを雇っていた文化から、扉ごしに、部屋の中にいる主人に用事を伺えるよう配慮したためと言われています。

 また、侵入者があった時に、扉を盾に内側から押し返すためともいわれているようです。

 ですので、我が家のボックスルームの扉の場合も、当初、イギリス方式で、部屋の中心に向かって開くようになっていたのに、どこか過去の住民の段階で間違って壁際に開くように扉を取り付け変えてしまったため、照明スイッチが扉の裏に隠れてしまう事態となってしまったことがわかります。

気楽に、自由なDIYで住まいを楽しめたら

 こんな感じで、過去住んでいた住人のDIYの腕前が、後に住む私たちにも影響を及ぼすイギリス住宅。

 我が家だけでなく、多分、他の住宅でも、過去繰り返されたDIYによって、摩訶不思議な住宅になっているお宅も多いはずと思います。

 でも、このいい加減さが、かえって日々の暮らしを心穏やかにしてくれました。

 日本に住んでいた頃は、壁に画びょうを刺すことに抵抗があったり、床にちょっとでも傷がつこうものなら大騒ぎしていた私ですが、ここイギリスに来てからは、すっかり大らかになり、壁が傷つけば、フィラー(壁に小さな穴が開いた時に埋めることのできる混ぜ物)で埋めて、またペンキでも塗っておけばいいや。床に傷がつけば、また数年後に張り替えればいいや。という具合に、ちょっとのことでは気にならなくなりました。

 なにせ、そもそも、すでにあちこちが歪んでいたり、曲がっていたりするものですから、いちいち気にしていたら始まりません。

 そうなんです。生活する上で、自由に好きなように住宅を楽しめるのがDIYの良さです。

 家具を作ったり大袈裟なことはできませんが、壁の色を塗り替えたり、壁紙を張り替えたりくらいは気軽にできますもんね。

 日本でも流行ではなく、当たり前の文化としてDIYが根付いていくといいですね。