料理が好きになるかもしれないスープ

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2019/05/07 09:00

初めて料理をしたときのことを、覚えていますか? 料理好きの方は、どんなきっかけで料理を好きになったのでしょう? 「料理は苦手、難しい、私にはできない……」と思っている方の背中を押せるよう、有賀さんがエールのこもったコラムを送ります。

料理、好きですか?

 この質問に胸を張って、「好きです」と答えられる人は幸せだ。

 たとえ作った料理が、人のうらやむようなごちそうではないとしても、自分の食べたいと思う味を気軽に作れるということには、とても価値がある。

 仕事で何も食べずに夜遅く家に帰ったとき、私はカップスープに冷凍野菜を加えて食べたりするようなこともある。けれど、そんなほんのひと手間かけただけのものでも、口にすると疲れがすうっと抜けていく。家という安心感が、そう感じさせるのだろうか。

 その一方で、作ることがあまり好きではない人にとって、料理が義務になってしまったとき、それは止めることのできない行為だけに、本当に大変だと思う。食べることは、断食や病気でもしない限り、休みなく続くからだ。

 そもそも、料理は、今日始めていきなり上手にできるというものでもない。毎日のごはんを手作りでうまく回していくには、ある程度の経験が求められる。

 昔、料理は、母から子へと伝わっていくものだったが、すでにそういう時代ではない。国語や数学と違って、学校でも塾でもしっかりと習うことがないから、その経験がないままに大人になる人は大勢いるはず。

 誰もが最初は、料理初心者だ。「よし、料理したい!」と思いたったとき、どうやったら作ることを好きになれるか。どうやったら最初の一回目で失敗なく料理が完成し、「おいしい!」と思えるだろうか。

 私は最近、ずっとそんなことを考えている。

「簡単な料理」と「簡単と思っている料理」は別もの

 かなり昔、私が新婚の友人の家に遊びに行った日の話。

 彼女は料理が苦手であるということは、事前に聞いていた。結婚するまで、味噌汁すら作ったことがなかったそうだ。

 ところが、彼女の家に着くと、手作りの餃子と揚げたての春巻きがどーんと出てきたではないか。しかも、すごくおいしい。なぜか、この2品だけは、彼女の母親が作るときに手伝いをしていたから、作れるのだという。

 私たちに料理を勧める彼女に「料理、できるじゃない!」とほめた。すると、彼女は驚いたことに、「だって、春巻きなんて簡単じゃない」と答えた。具を炒めて巻いて、揚げるだけの春巻きは、楽な料理というのだ。

 そのとき、私は気が付いた。人というのは、難しいことを難しいと思うわけではなく、やったことのないことを難しく思うのだ。これは、人間が本質的にもつ心理ともいえる。

 つまり彼女は、母の手伝いで何度も作ったことのある春巻きは、簡単だと思い込んでいた。だが、母任せにして作ったことのない味噌汁は、難しい料理のカテゴリーに入れていたのだ。

 人は、知らないことをやるときには勇気がいる。料理初心者にとって、様々な食材に調味料、新しいレシピは、知らない人と出会うのと同じように緊張感があり、またうまくいくだろうかと不安もあるものなのだろう。

 初心者だけじゃない。私のように料理を仕事にしている人間ですら、新しい食材や料理法にチャレンジするときは、かすかな怖さがある。

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