翻訳家でお菓子ブログを主宰している森嶋マリさん。サンドイッチが大好きという森嶋さんですが、どうしても解せないことがあるんだとか。

サンドイッチっていつからあるの?

 こんにちは! お菓子ブログ〈Single KitchenでSweetsを〉のmarinこと森嶋マリです。

 お菓子ブログと銘打ったブログに記事をアップしている私ですが、パンもよく焼きます。

 パンを焼くようになって、かれこれ5年。基本の丸パンから、食パン、バターロール、塩パン、ベーグル、ピタパン、さらには、難易度高めのカンパーニュや、超難関のバゲットにも挑戦しています。

 そんなふうに焼き続けても、とうてい作りきれないほど数多くの種類があるパン。都会のパン屋さんを覗けば、いつも新たな発見があります。世界へと目を広げれば、お母さんが焼く素朴なパンから、職人が焼く華麗で美味なパンまで、それこそパンの数は無限大。

 そんな星の数ほどあるパンの中でも、日本人にいちばんなじみがあるのは、四角い食パンでしょう。

 昭和生まれの私など、まさにそのとおり。子供の頃は、50円玉を握りしめ、「8枚切りを一斤ください」という言葉を心の中で何度も練習しながら、近所のパン屋さんにおつかいに行ったものでした。パン屋さんと言っても、いまのような手作りパンのお店ではありませんよ。大手メーカーの食パンと何種類かの菓子パンが並んでいるだけのお店。いまどきの素敵な手作りパン屋さんがあたりまえの子供たちに話しても、いまひとつピンと来ないはず。でも、パンと言えば、ほぼ食パン・オンリー――そんな時代もあったのです。

 そして、食パンで作るサンドイッチを食べれば、ちょっとオシャレな気分になれた時代でもありました。そんな刷り込みがあるせいか、私はいまでもサンドイッチが大好きです。

 というわけで、今回はサンドイッチのお話です。

ちょっとおしゃれに楽しめる、食パンを使った定番サンドイッチ
ちょっとおしゃれに楽しめる、食パンを使った定番サンドイッチ

 サンドイッチはいつが起源なのかわからないほど、大昔から食べられていました。サンドイッチと呼ばれるようになるはるか前から、パンを食する文化がある地域では、パンにおかずをはさむという食べ方は、日常的に行われてきたのです。記録に残る最古のサンドイッチは、ユダヤ教の「過越の祭り」で食べられる「ヒレル・サンドイッチ」と言われています。「マッツォ」という無発酵のパンに子羊肉とハーブをはさんだもので、紀元前1世紀にユダヤ教のラビ(指導者)が考案したと伝えられています。

 でも、そういう食べ方をサンドイッチと呼ぶようになったのは、18世紀も半ばになってから。イギリスのサンドイッチ伯爵が、パンに肉をはさんだものをしょっちゅう食べていたことから、「サンドイッチ」と呼ばれるようになりました。なぜ、サンドイッチ伯爵がそういう食べ方を好んだのか? それは寝食を忘れるほどギャンブルにのめりこんでいて、ギャンブルをしながら片手で簡単に食べられるものが欲しかったという説が一般的です。一方で、その伯爵はギャンブラーではなく、きまじめな国務大臣で、忙しい職務の合間に簡単につまんで食べられるものを持って来させたという説もあります。

 どちらの説が本当なのかはわかりませんが、片手でつまんで手軽に食べられるというところが、伯爵のツボにはまったのは間違いなさそうです。

つい間食したくなる、片手でつまめるフルーツサンド
つい間食したくなる、片手でつまめるフルーツサンド

 そう、薄くスライスしたパンを使ったサンドイッチの良さは、そこにあると私も感じています。公園のベンチに座って、本を読みながらパクつくもよし。仕事が忙しければ、パソコンの前に陣取って、片手でマウスを操作しながら、もう片方の手で食べるもよし……いえいえ、それはあまりお薦めしませんけどね。

サンドイッチ好きの私が言いたいこと!

 サンドイッチ伯爵が好んだ薄いサンドイッチは、250年以上が経ついまも健在ですが、具がたっぷりの分厚いサンドイッチも人気を博すようになりました。

具だくさん&片手でOK、ちぎりパンのサンドイッチ
具だくさん&片手でOK、ちぎりパンのサンドイッチ

 その極めつけが、昨年から今年前半にかけてブレイクして、Instagramにも無数にアップされた「わんぱくサンド」ではないでしょうか。レタス、千切りニンジン、紫キャベツ、厚焼き卵、アボカド、トマト、ハム、チーズなどなど、すべてをパンにはさんで、ラップでぐるぐると包んでから、半分にカット。色鮮やかな断面が食欲をそそります。こぼさずに食べるには注意が必要で、片手で気軽にとはいかないのが玉にきずですが、栄養たっぷりの具材を考えれば、きちんとテーブルについて食べる立派な食事。それに、マウス片手に作業しながらなんて、お行儀の悪い食べ方ができないほうが、かえって体にも心にも良さそうです。

栄養たっぷり、わんぱくサンドは朝食にも◎
栄養たっぷり、わんぱくサンドは朝食にも◎

 カフェで出てくるオシャレなサンドイッチも、定番になりました。こちらは昔ながらの食パンを使ったものより、リュスティック(フランス語で田舎風)のようなフランスパン系や、ベーグルのようなむちっとして歯ごたえのあるパンを使ったものが多いように感じます。

 ベトナムのカフェで食べた「バインミー」もそんなオシャレなサンドイッチのひとつでした。かつてフランス領だったベトナムのバインミーに使われているのは、フランスパン。そこに鶏肉やレタスなどをはさみ、さらに、なますとパクチーが入るというエスニックなサンドイッチです。

フランスパンを使ったエスニックなサンドイッチ、バインミー
フランスパンを使ったエスニックなサンドイッチ、バインミー

 さらに、オシャレなサンドイッチといえば、忘れちゃいけない、パニーニ。イタリアではサンドイッチ全般を指すパニーニ(パニーノが単数形で、パニーニは複数形)ですが、アメリカ、イギリス、日本などでは、パンの表面にストライプや網目状の焼き色をつけたものを、そう呼ぶことが多いようです。

焼き色が食欲をそそる、パニーニ風ローストビーフサンド
焼き色が食欲をそそる、パニーニ風ローストビーフサンド

 こんなふうに日本の食卓にもすっかりなじんだサンドイッチですが、サンドイッチ好きの私としては、いまひとつ解せずにいることがあります。

 それは魚が具材に使われることが少なすぎる! というか、ほとんど魚が使われていない! ということ。

 「ツナサンドがあるし、スモークサーモンもはさむじゃないか」と言う声が聞こえてきそうですが、でも、刺身に焼き魚に煮魚にと、食文化これほど魚が根づいている日本で、缶詰やスモークの魚しかパンにはさまずにいるのは、ちょっと寂しくて、もったいない気がします。

 そこでご紹介したいのが、トルコのイスタンブールの名物、さばサンドです。イスタンブールはヨーロッパとアジアにまたがる都市――街を二分するボスポラス海峡の左岸側がヨーロッパ、右岸側がアジアという世界でもめずらしい街。海に面していますから、当然、魚をよく食べます。入江にかかる橋の周辺には、さばサンドの屋台が並び、焼きたてのさばをはさんだパンが飛ぶように売れています。異国情緒あふれる街で、海を眺めながら食べるさばサンドは観光客にも大人気です。

 でも、そんな舞台設定がなくても、脂ののったさばが手に入る日本で食べてもおいしいはず。さばサンドのおいしさが日本中に広がって、それがきっかけになって、日本各地でご当地名物の魚のサンドイッチが生まれたら楽しいだろうなぁ~、と勝手に想像をふくらませています。

 というわけで、日本でもおいしい魚のサンドイッチが誕生することを願いつつ、さばサンドのレシピをご紹介しましょう。

日本でもおいしい魚を使おう! さばサンドの作り方

 さばサンドは、ソフトフランスパンを買ってきて、さばを焼いてパンにはさめばほぼ完成という簡単なサンドイッチですが、それではちょっと物足りないという方のために、パン焼き初心者でも作りやすいフォカッチャのレシピをご用意しました。

 レシピ動画も作りました。休日のブランチにぴったりの焼きたてのフォカッチャで、さばサンドをぜひ作ってみてください。

フォカッチャでさばサンドの作り方

【材料(4人分:フォカッチャは18cmスクエア型を使用)】
強力粉 250g
薄力粉  50g
砂糖 12g
ドライイースト  3g
ぬるま湯 180g
塩 6g
オリーブオイル 15g
オリーブオイル、塩、黒胡椒 適量

塩さば 2枚(骨がある場合は、骨を抜いておく)
タマネギ、トマト、レタス、塩、胡椒、レモン 適量

【作り方1:フォカッチャを作る】
1.ボウルに強力粉からドライイーストまでを入れ、ぬるま湯を加え、ゴムべらで混ぜる

2.塩とオリーブオイル(15g)を加えて、混ぜる

3.まとまってきたら、台に出して5~10分こねる

4.丸めてボウルに入れ、霧吹きで水をかけ、蓋をして、2倍になるまで発酵させる(35℃で約1時間)

5.台に出して、丸めなおし、濡れ布巾をかけて15分間休ませる

6.型に油を薄く塗る

7.生地を型の大きさに伸ばし、型に入れる

8.表面にオリーブオイルを塗り、塩と黒胡椒をふる

9.200℃に予熱したオーブンで25分焼く

10.パンを型からはずし、ケーキクーラーなどに乗せて粗熱を取る

【作り方2:具を用意する】
11.塩さばを半分に切り、グリルで焼く

12.タマネギ、トマトはスライスし、レタスは食べやすい大きさにちぎる

【作り方3:パンに具をはさむ】
13.フォカッチャを四等分し、さらに二枚にスライスする

14.フォカッチャにレタス、トマト、さば、タマネギを乗せ、塩と胡椒をふり、レモン汁をたっぷりふりかけ、サンドする

*型がない場合は、18cm四方に伸ばして、オーブンシートに乗せて焼きましょう。