20年間のイタリア生活を終え、日本に帰国。おいしいイタリアンや 普段の食事をブログで発信している、yukoさん。イタリアでのクリスマスと年末年始についてについてのお話をしてくれました。クリスマスイブといえば、チキン、という日本人。一方イタリアはそうではないようです。

クリスマスは家族と過ごす日

 カトリックの国イタリアにとってキリストが生まれた日を祝うクリスマスは一年間の中で最も大切な行事の一つです。イタリアのクリスマスは「ナターレ」と呼ばれます。

 学校は20日前後からクリスマス休暇に入り、25日はもちろん翌日の26日は「サント・ステフェノ(聖・ステファノの日)」と呼ばれ、祝日になります。この2日間はレストランやお店がほとんど閉まってしまうところが多いです。ブランドなどの有名店やスーパー、レストランもクリスマス休暇を取りますのでこの時期に旅行される方は気を付けてください。

 さてクリスマスといえば、イタリアでは家族が集まって過ごす大切な時間になります。

 家族の結びつきや家族愛の強いイタリア人にとって、クリスマスは恋人と二人で過ごすというよりは大切な家族と過ごす日なのです。普段遠くに住んでいてあまり会えない親戚や家族が集まり、語り、笑い、たくさん飲んでおいしい料理を食べて過ごします。ちょうど日本のお正月みたいな感じですね。

 パーティーは24日の夜ぐらいから始まります。

 さぞかしごちそうが並ぶ豪華なパーティー・・・いえいえ実は、24日のイヴは宗教上の関係からお肉は食べずに魚介系と野菜が中心になります。

 もともとイヴの夜は キリストの誕生を厳かな気持ちで迎えるという意味から「チェーナ・ディ・マーグロ」と呼ばれる質素な夕食にするという風習があるそうです。

 そして7種類のお魚をいただくという習わしもあるそうで、最近では、お肉は食べないにしてもお魚のごちそうが並ぶようです。

 ウナギを輪切りにして白ワインで煮た料理、いかのフライ、ボンゴレスパゲッティ、バッカラと呼ばれる塩タラのトマト煮、魚介のサラダ、カルパッチョ、スズキやタイなどの丸ごとグリルなどなど。

イタリアのイヴの代表的なメニュー、魚介のサラダ
イタリアのイヴの代表的なメニュー、魚介のサラダ

 そして24日から25日の日付が変わるとスプマンテなどを開けて、乾杯。子どもたちはツリーの下に置いてあるプレゼントを開けることが許されます。

 このプレゼントは子どもだけということではなく家族一人一人にそれぞれが用意します。そして家族だけでなく会社の同僚や普段お世話になっている人などにも渡します。だからクリスマス前はプレゼントを買う人で街は大にぎわいです。これも日本の大みそかのようなにぎわいぶりになります。

 イタリアのナターレの飾りつけには、クリスマスツリーより欠かせないものがあります。

クリスマスには「プレゼピオ」が欠かせない

 イタリアのナターレの飾りつけには、クリスマスツリーより欠かせないものがあります。それが「プレゼピオ」です。

ツリーより「プレゼピオ」
スペイン階段に飾られたプレゼピオ

 プレゼピオはキリスト誕生の様子を人形にして並べたものです。馬小屋で生まれたといわれているキリスト。キリストのそばには父ヨセフと母マリアが寄り添っています。

プレゼピオは、キリスト誕生の様子を表しています
プレゼピオは、キリスト誕生の様子を表しています

 そして小さなキリストの赤ちゃんは24日までは置かれていません。誕生した25日に日付が変わってから置かれます。なんだかいい加減そうに見えるイタリア人ですが、ナターレの行事に関しては歴史を重んじて律義に対応するようです。

 このプレゼピオ。家に飾れるミニチュアタイプから教会に飾ってある大きなものまでさまざまです。

 イタリアのウンブリア州ペルージアにある街「グッビオ」はひとつの山全体にライトで大きなツリーの飾りつけをするのが有名ですが、街のある公園に等身大のプレゼピオがあります。入場は無料で、夜はライトアップされるということで見に行きましたが、なんだか怖い。小さかった娘が泣き出したので早々に引き上げたことがありました。

バチカンのサンピエトロ広場に飾られたプレゼピオ
ヴァチカンのサンピエトロ広場に飾られたプレゼピオ
ビットリオ・エマニュエレ広場に飾られた電光のプレゼピオ
ビットリオ・エマニュエレ広場に飾られた電光のプレゼピオ

イタリアのライトアップはおしゃれで個性的

 近年はクリスマスツリーや街のライトアップも華やかになりました。

横の小屋に大きなプレゼピオが飾ってあります
ヴァチカンのクリスマスツリー
コロッセオとツリー。ローマのこの景色が一番好きでした。この木はもともと植わっているものでそこに飾り付けをしています
コロッセオとツリー。ローマのこの景色が一番好きでした。この木は持ってきたものではなく、もともと植わっているものでそこに飾りつけをしています
コルソ通りのイルミネーション。イタリアンカラーなイルミネーションが全長1.5㎞の通りに飾られました。
コルソ通りのイルミネーション。イタリアンカラーなイルミネーションが全長1.5㎞の通りに飾られました
時間が来ると自動的に雪が舞います。
巨大なスノーボール。時間が来ると自動的に雪が舞います
時間が来ると自動的に雪が舞います。
ライトアップされた公共バス

 イタリアのイルミネーションはおしゃれで個性的な気がします。

 これらナターレの飾りは、12月8日の「インマコラータ」という祝日から、新年を迎えた翌年の1月6日の「エピファニア」という祝日まで飾られます。

イヴのヴァチカン
イヴのヴァチカン

 この24日から25日にかけて、ローマにあるヴァチカン市国ではこの日だけの特別なミサが行われ、世界中から信者が集まります。

 このミサはイタリア人以外でも事前に申し込みをしてチケットを受け取れば参加できます。

ヴァチカンのミサの様子
ヴァチカンのミサのチケット

 一度、日本からのお客様と一緒に参加したことがあります。大勢の人々とミサが行われるサン・ピエトロ寺院に入るための長い列、そして何回かの荷物とボディチェックの後、寺院に入ると広いサン・ピエトロ寺院が人々で埋め尽くされていました。そして神聖な雰囲気に包まれていたのを覚えています。騒ぎ立てる人は誰もいなく厳かにミサに参列していました。

サンピエトロ寺院のミサ
サンピエトロ寺院のミサ

 もちろんヴァチカンだけでなく街の小さな教会でもミサは行われます。

 クリスマスの夜、街にはたくさんの人々であふれていましたが大騒ぎをしている人はほとんどいなく厳かに神聖にクリスマスを迎えているといった雰囲気でした。

 

25日のパーティーで食べるものは

 25日のパーティーはお昼ごろから始まります。家族そろって和気あいあいと飲んで食べてのパーティーです。この日は生ハムなどのアンティパストから始まり、パスタなどのプリモピアット(前菜と主菜の間に出る料理)。プリモ料理はスパゲッティなどより大人数でも用意できるラザーニャや「トルテッリーニ・イン・ブロード」などが多いです。

トルテッリーニ・イン・ブロード
トルテッリーニ・イン・ブロード

 中にハムや肉などの詰め物をしたパスタ(トルテッリーニ)をスープ(ブロード)に浮かべた、トルテッリーニ・イン・ブロード。ちょっと簡単そうに見えますが、何日か前からお肉と野菜でコトコトと煮てブロードを取り、スープを手作りした愛情たっぷりの料理です。

 セコンドはお肉が中心です。カッポーネと呼ばれる去勢鶏のローストや牛肉や仔牛肉などのオーブン料理が多いです。またそれぞれの料理に合わせてワインを用意することも、おいしいものをとことん味わうイタリア人のこだわりでもあります。

 そしてドルチェはクリスマスのケーキ、パネットーネをいただきます。

 パネットーネはミラノ発祥の「大きなパン」という意味のケーキというよりはパン菓子です。その歴史は600年以上といわれています。

大きなパン、という意味のパネットーネ
大きなパン、という意味のパネットーネ

 パネットーネとスプマンテはクリスマスの夜には欠かせません。24日から25日に日付が変わるときスプマンテなどを開けるといいましたが、その時に一緒にいただくのがこのパネットーネです。ごちそうをいっぱい食べた後でも遅くまで起きているとおなかが空きます。そんなときにパネットーネをいただくのです。その他にもこのクリスマス時期の朝食はカプチーノとパネットーネというイタリア人が多いです。パネットーネは干しブドウや砂糖漬けのフルーツが生地に混ざっています。

クリスマス時期の朝食はパネットーネ
クリスマス時期の朝食はパネットーネ

 天然酵母で2~3日かけて発酵させるので独特で個性的な味と食感が生まれます。

 ちなみにこのパネットーネ、どんなに料理上手なマンマでも家庭で手作りする人はほとんどいません。時間がかかる上にスーパーに行けば安いお値段でおいしい種類の多いものがたくさん売っているからです。

 11月の下旬ぐらいからスーパーには色とりどりのパネットーネの箱が山積みされます。これを見かけるとあぁ~もうすぐクリスマスだな…と感じていました。まさに風物詩です。

スーパーにはパネットーネが山積みです
スーパーにはパネットーネが山積みです

 このパネットーネと同じくらい有名なもう一つのクリスマス菓子が「黄金のパン」という意味のパンドーロです。ヴェローナ発祥ですが今ではイタリア全土に広まり、パネットーネと並ぶほどの人気があります。

パネットーネと並ぶ人気の「パンドーロ」
パネットーネと並ぶ人気の「パンドーロ」

 全体に粉砂糖をまぶしてからいただきます。すらっとした星型で、切ってみると鮮やかな黄色い生地が特徴です。

 パネットーネもパンドーロも基本の生地は同じで、パンドーロも2~3日かけて発酵させます。

 我が家はどちらかというと何も入っていないパンドーロ派でクリスマスには必ず購入していました。

 このようにイタリア人のクリスマスは家族そろってミサに行って祈りを捧げ、無事にクリスマスを迎えられることに感謝をして、おいしいものを食べて飲んで、家族そろってこの時間を分かち合えることを喜び、家族のきずなを深めて過ごします。

 

イタリアのお正月

 さてイタリアのお正月の祝日は1月1日のみです。学校や会社はクリスマス休暇から続けてお休みという人は多いですが、お店やレストランは31日まで空いていて、新年も2日から普通に営業します。ただし気を付けなければいけないのは31日は早じまいするお店が多いです。

 この大みそかからお正月にかけてはクリスマスとは違って、恋人や友達と旅行に出たりホームパーティーを開いたりすることが多いです。

 31日の大みそか「カポダンノ」といいますが夕方になると街のあちこちから爆竹の音が響きわたります。

 大みそかの夜は「チェノーネ」と呼ばれる大晩餐会があります。レストランなどもこの日は特別メニューとなり、シェフが腕によりをかけた料理がこれでもか~といった感じで出てきて、年明けの0時ぐらいまで食べ続けます。

 カウントダウンが始まる少し前にスプマンテやシャンパンが用意され、新年の乾杯をしてから花火を打ち上げたりそれを見たりして新年を迎えます。この花火、一般のおうちの人たちも上げるので、自宅にいても見ることができます。

 今でも印象に残っているのは、スキー場で真っ白な雪山に上がった花火や、ヴェネチアの運河から上がる花火。美しく幻想的な感じでした。

 「ボォナンノ(新年おめでとう)」という言葉が飛び交い、華やかに新年が迎えられます。

 この新年を祝う花火、冬空の花火も素敵です。

 さてこの大みそかからお正月にいただく料理の一つにレンズ豆の煮込みがあります。

大みそかからお正月に食べる、レンズ豆の煮込み
大みそかからお正月に食べる、レンズ豆の煮込み

 ザンポーネやコテキーノといった豚足が入ったりします。レンズ豆は形がコインに似ていることから新しい年の金運を願う意味で食べられるそうです。

 そしてもう一つこのクリスマスからお正月にかけてのお料理にナポリの「カリフラワーのリンフォルツォ」があります。

カリフラワーのリンフォルツォ
カリフラワーのリンフォルツォ

 リース風に盛り付けていますが、オリーブやアンチョビなどとともにカリフラワーをマリネにしたものです。お客様の多いこの時期、たくさん作っておけば、突然のお客様にも対応できるという保存食です。

カリフラワーのリンフォルツォ

【材料】
カリフラワー1個
ロマネスコ(小)1/2個
ケーパー大さじ1
アンチョビ6枚
黒・緑オリーブ各10個
ピンクペッパー少々
白ワインビネガーor米酢1/2カップ
オリーブオイル 大さじ3
蜂蜜 小さじ2
赤・黄パプリカ各100g
塩・黒粒コショウ少々

【作り方】

①パプリカを縦長に切る。鍋に白ワインビネガー、蜂蜜、黒粒コショウと、切ったパプリカを入れて火にかけ、さっと煮る
 
② ①のパプリカと黒粒コショウを取り出し、汁に、オリーブオイルを加える。これがマリネ液となる
 
③さっと茹でたカリフラワーとロマネスコ、ケーパー、アンチョビ、黒・緑オリーブ、ピンクペッパーを入れ、②のマリネ液に漬け込む
 

④器にリース型に盛りつける

 イタリアのクリスマスとお正月の様子をこの時期のおいしいものとともにご紹介してきました。

 一年で一番大切な行事のクリスマスを家族と過ごすイタリア人。

 大切な人と過ごす時間、そこにはやっぱりおいしいものがたくさんありました。もし今年まだ予定が入っていなかったら、イタリア風に家族と過ごすなんていうのもいいのではないでしょうか。