今年ももうあと少しで終わっていきますね。人気インスタグラマー、あさひさんによる「何にもなかったようでちゃんといろいろあった」1年を振り返った、じんわり心にしみるコラムをお届けします。

区切ってくれないと、終われない

 こんな真冬に季節外れかもしれませんが、今から、ちょっと怖い話をします。いいですか……。信じられないかもしれませんが、なんと、2017年があと、数日で、終了します……。

 今年の1月。年賀状を眺めながら、確かに「今年もあっという間に終わるんだろうなあ」と思いました。ええ、思いました、でも、その想像を! さらに上回るスピードで! 今年も、終わろうとしています。しかもその速度は年々、確実に早くなっていくのです。どうですか。怖い話ですよね。怖すぎてちょっと震えがきます。

 大掃除は終わりそうですか?そんな簡単に終わるわけがないですよね。大掃除どころか、うちは昨日の洗濯物すらまだです。年賀状は書き終わりましたか? 大丈夫、私はまだ年賀はがきを買いに行ってすらいません。なんなら今年はもういいか……と思ったりもしますよね。わかります。

 一体、世の中の何割の人が、1年をきちんと締めくくることができているのでしょう。コンビニは24時間あいていて、電車も毎日動いていて、大晦日も元旦も関係なく、たくさんの人が働いて。どうやって往く年とお別れして、来る年を迎えたらいいんでしょう。12月31日と1月1日との間に、一体なにがあるのでしょうか。なんにもないのです。賑やかにカウントダウンをして新年になっても、昨日から1分、進んだだけです。

 でも、そのなんにもない境目に、何か意味でも見出さないとやってられません。区切ってくれないと、終われないのです。終わってくれないと、進めないのです。仕事でもなんでもそうですが、締め切りがないと頑張れません。もうこれでいいや、と過去として手放せないのです。

断捨離は簡単ではありません

 この時期になると普段なかなか物を捨てられない人も、思い切った断捨離を決意されるのではないかと思います。

 たかが断捨離と言ってもその作業は簡単ではありません。衣替えのたびに衣装ケースから出たり入ったりする、結局、一度も着なかった服たち。きっと来年も着ないんだろうな……と察しつつも、防虫剤だけ変えて、今年もまた、捨てられず。でも、毛玉だらけのセーター1枚にしたって、買った時の嬉しかった気持ち、着て出かけた場所の思い出、似合うと言ってくれた人のこと、ぜんぶ一緒にくっついているのです。

 もし捨ててしまえば、きっともう二度と思い出さないような、ささやかな気持ちが毛玉のようにくっついて。それはたぶん、忘れてしまっても困らないようなことばかりなのでしょうが、でも、そういうことを覚えておきたいのです。

 ささやかでも自己満足でも、自分だけが知っている、ひとつひとつ乗り越えてきた歴史があるから。だからなにかひとつ捨てるのだって、そんなに簡単じゃないのです。

嬉しかったこと、悲しかったこと

 今、この文章を読むために割いてくれているこの時間、この時間だけでも少し、今年のことを振り返ってみませんか。今年はどんなことがあったのか、自身のSNSを見返してみるのも楽しいものです。「この時からもうこんなに経ったんだ……!」と思うこともあれば、逆に「あれっ?これってまだ今年だったっけ!?」などと驚くこともあります。本当は、あっという間なんかじゃなかったのかもしれません。

 今年、一番悲しかったことはなんでしたか。

 今年、一番嬉しかったことはなんでしたか。

 パッと思いつく派手なものではなく、深く深く自分に問いかけてみると、じんわりと思い出すことがあります。

 それはおそらく、SNSには投稿していないはずです。

 心が震えるほど嬉しかったっことや、身が引き裂かれるように悲しかったことは、なかなかSNSには書けないものです。なぜならそれはたぶん、誰かに気安く共感されることを望まないはずだから。

 喜びも痛みも、自分だけのものとして心にしまいこんであるはずです。そういう気持ちをそっと引っ張り出してきて、眺めてみるのも悪くありません。だってもう、年の瀬なのだから。いろんなことがあった今年が終わってしまうのだから。

なにもないようで、いろいろあった

 ささやかなこと、言葉でも景色でも、いいことでもわるいことでも。「これは一生忘れないだろう」なんて大層に思ったことでも、人は案外、簡単に忘れてしまう生き物です。それならそれでいいこともあるし、できればいつまでも忘れたくないことも、やっぱりたくさんあります。

 たった一年の間に起こった出来事だけでも、心の中のキャビネットは、思いのほかぎゅうぎゅうになっています。

 感情までミニマリストにはなりたくないけれど、かといって抱えすぎると、いっぱいいっぱいで溢れかえってしまいそうなのが難しいところです。

 ずっと抱えていきたいもの、往く年にそっと置いていきたいもの、まだ、どちらとも片付けられないもの。悲しかったことや辛かったことで、もし、今年に置いていけそうなものがあるなら、置いていくのもいいかもしれません。意地でも抱えていきたいものもあれば、そっと置き去りにして、やさしく忘れる方がいいものも、たぶんあるはずです。

 年末は何かと忙しすぎて、ひとりでじっくりと自分のことを振り返る時間なんて、なかなか取れないかもしれません。だから今だけ、ほんのちょっとだけ、自分のこと思い遣ってみませんか。

 今年も1年、駆け抜けました。あっという間のようなふりをして、実に、たくさんのことがありました。人様に語れるようなカッコいい目標の達成ばかりではなかったかもしれません。でも確かに、日々の中で、いろんな気持ちを乗り越えてきました。誰もが平等にまたひとつ、年をとります。なにも変わってない、なにもなかったようでいて、ちゃんといろいろあったのです。

 今年も、残りあとわずかです。私はと言うと、やっと32歳の厄年が終わろうとしています。振り返れば、厄年らしい一年だったとも言えるし、厄年らしからぬ一年だった、とも言えます。悲しいことや辛いことは防ごうとしても突き刺さってくるけれど、嬉しいことや楽しいことは、こちらが見落としてしまえば、なかなか向こうからはやってきてくれません。それを見落とさないためには、心の中に良いことがキャッチできるような空いたスペースが、余裕が必要なのだと思います。

 あとわずかで、また新しい1年が始まろうとしています。来年もあっという間に過ぎるのでしょう、おそらく今の想像を上回るスピードで。そしてまた、たくさんの出来事が待っています。部屋の大掃除も忙しいですが、心のキャビネットこそ少し、来年のためのスペースを空けて待ちたいものです。新しい、嬉しいことや楽しいことを見落とさないために。

 それではみなさま、どうぞ良いお年を。