「フランス婚」。形にとらわれない生き方

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2018/01/31 12:00

「フランス婚」というと、「愛があればそれで良い。結婚にとらわれない」というスタイルだと思っている人も多いかもしれません。でも実際には“愛だけがあれば”とは、むしろ逆パターンもあるんだとか……!? フランス在住のマダム愛さんが教えてくれました。

愛の国・フランスを象徴する、「フランス婚」とは

 “愛の国、フランス。愛に生きる、フランス人” そのようなイメージを持っている方は、少なくはないと思います。

 実際にパリの街を歩いていると、日本では目を覆いたくなるようなレベルで仲良さそうにしているカップルを頻繁に見かけます。でもそれはフランス人だけでなく、世界中から来ている観光客たちも同じ。きっとロマンチックなパリの街にいると、誰もがそんな気分になってしまうのかもしれませんね。もしくはそんな2人だからこそ、旅先にパリを選んだのかも?事情はわかりませんが、とにかくパリの街はいつも愛に溢れております。

 愛の国・フランスをイメージする言葉の1つで、“フランス婚”というのがあるのをご存知でしょうか?

 “フランス人のように愛を1番にして生きる”と宣言していたとある日本の大女優が、その後パートナーを見つけ”私は形式にはこだわらない。フランス婚です。”と事実婚宣言をしたことから、すっかりこの言葉が有名になりました。

 そのせいか、“フランス婚”とは“愛があればそれで良い。結婚にとらわれないで、2人が一緒にいるのが大事”というスタイルだと思っている人も多いかもしれません。

 でも実際にフランスの事実婚は、皆様が思っているようなものではまったくなく、“愛だけがあれば”とは、むしろ逆パターンもあるくらいのものなんですよ。

フランス婚「パックス」と結婚はどう違う?

 日本でフランス婚と言われているフランスのPACS(パックス )については、すでに様々なサイトやブログetc で説明されており、そこではたいてい、“PACS(パックス、仏:Pacte Civil de Solidarite, 日:民事連帯契約) というのは1999年にフランスの民法改正により認められることになった契約であり、もともと同性間の結婚が認められていなかったときに、同性のカップルでも、社会保障や税法上で結婚と同等の権利を持てるようにと提案されたもの(2013年にフランスは同性婚を認めるようになりました)。“結婚よりも簡単に手続きできるため、現在では異性間のカップルでも行われるようになった。”なんて書かれております。

 でも、そうは言っても、結婚を普通とする私たち日本人の感覚からすると、なかなか実感がわかないし、じゃあ、結婚とPACSは、いったいどう違うの?ほとんど同じ権利ならば何で結婚ではなくPACSを選ぶの?都合よく別れられるから? それとも、愛があれば形にはこだわらないという国民性? とさまざまな疑問が湧いてくるかと思います。

 なので今回はもう少し具体的な身近な例と一緒に、この“フランス婚”であるPACSについてお話しようと思います。

その1 A君とBさんの場合「結婚式のため」

 彼らが知り合ったのは、大学時代。日本でいうサークルのような集まりで、お互い20歳のときに知り合いました。つきあって半年もしないうちに同棲を始め、結婚を意識するように。そのまま付き合い続けること、約5年。2人はとうとうPACSをしました。その2年後には結婚をし、その翌年には子どもが生まれ、今は幸せな家庭を築いております。

 実は私のまわりでは1番多いのがこのパターン。なぜあえて5年も同棲した後にPACSをして、その2年後に結婚をしたのかと言いますと、これは2人で結婚の準備をするためだったのです。

 フランスは結婚するのがとても大変な国なんです。

 日本のように婚姻届を提出して終わるのとはわけが違います。区役所に保証人を立てて申請をし、結婚に異議がないか、区役所の掲示板に張り出されたりもします。そして、区役所と言えども、区長さんの元、式が執り行われるのが決まりです。

 そしてフランスといえばキリスト教の国なので、教会で式をあげるのが当たり前なのですが、これもすぐにできることではありません。ちゃんと勉強会に出席をし、神父の元でキリスト教を学んだ後、やっと教会で式を挙げる許可がおりるのです。そして披露宴。これはもっともっと大変。なんせ日本のように“結婚式パック”のようなものは存在していないので、会場の確保、招待状の作成、料理人の手配、テーブルやグラスのレンタルetc 全てを自分達で行わないとなりません。しかもフランスの結婚式は2日間かけて行う盛大なもの。そんな理由もあり、結婚するためには約2~3年の準備期間が必要と言われているのです。

 結婚を決めたカップルはそんなに長い間、待っていられません。そのため、先にPACSをして、結婚と同等の権利を得てしまうのです。

その2 C君とDさんの場合「マイホームのため」

 C君とDさんは、お互いが20代後半のときに、職場で知り合ったカップル。知り合ってすぐに、DさんがC君のアパートに引っ越す形で同棲がスタートしました。でも、もともと1人で住んでいた部屋に2人で住むのは手狭なので引越しを考えるように。そんな中、堅実な2人は一緒にアパートを購入する事を決意。そのためにPACSをしました。

 これもよく聞く話。購入ではなく、借りるためだけのパターンもあります。

 なぜならパリのアパートはとにかく高い。とてもじゃないけれど、独身1人で買えるものではないし、大きなアパートを借りるのもまた高くて大変。なので2人でまずはPACSをし、それから一緒にアパートを購入したり借りたりするのです。アパートを一緒に購入するくらいですから、いずれ結婚を、と考えている2人が多いです。

その3 E君とFさんの場合「子どものため」

 E君とFさんは、とにかく子どもが大好きですぐにでも欲しかったのですが、まだ結婚するには、金銭面や仕事、時間etc、いろいろと問題があり、ためらっておりました。でも、全てが安定するのを待っていたら、いつまでたっても子どもを持てないし、既に30代後半だった彼女は自分の年齢のことも気になり、とりあえずPACSをし、子どもを産むことを決意。PACSをしている両親の元で生まれた子どもは、結婚とほぼ同等の権利があるので、まずは先にPACSすることにしたのです。

 このパターンも非常に多いです。その多さを表すデータとして、フランスの婚外子の割合の高さがあるかと思います。

 実際にOECDの2014年の発表によると、フランスでは半数以上である56.7%の子どもが婚外子という驚きのデータがあります。日本は2.3%だと言うので、日本に比べるといかにフランスの婚外子率が高いかわかりますよね。

 それぐらい気軽にPACSなどで子どもを産んでしまうのです。

 半数以上が婚外子だなんて、日本人にとっては考えられないですよね。結婚もしないで子どもを産むなんて! と、マイナスのイメージが強い人も多いかと思います。ただ、フランスの、このように結婚にとらわれないで子どもを産む感覚は、先進国の中で1位2位を争う出生率の高さを維持する理由の1つとなっているのは間違いないかと思います。

 晩婚化が進む中、結婚をしてないと子どもを産めないという風潮は減らして行かないと、子どもの数はどんどんと減って行く一方なのかもしれません。

その4  G君とHさんの場合「お金のため」

 これもよく聞くパターンなのですが、お金をセーブするためにPACSをします。ほぼ結婚と同等の権利が与えられることで、2人で負担する合計額が大幅に減額できるメリットがあります。節税もできるし、住居なども1人で1つのアパルトマンに住むよりも2人で1つに住むほうが1人あたり安く済みます。そのため、書類だけで気軽にできるならと、とりあえずPACS!なんて言う人も多くいるのです。ただ、こう言ったパターンで気軽にPACSをした2人は、私のまわりのデータではありますが、別れる率が残念ながら高いです。

番外編  I君とJさんの場合「完全に個人的な理由」

 私達の親しい友人に、とても真面目なカップルI君とJさんがおります。社会人になって、共通のお友達を通して知り合った二人。すぐに意気投合しておつきあいをすることになりました。

 I君にとってJさんは初めての恋人であり、すぐに運命の人だと思ったそうです。真面目な性格のせいなのか、同棲するまでに2年ほどかかり、さらに2年の月日を一緒に過ごした後、とうとうPACSをすることにしました。

 でもこれには少し驚いた私達。

 なぜなら彼らみたいな真面目なカップルで、金銭的にも仕事的にも何も障害がなさそうな2人は、4年もおつきあいをした後は結婚をすると思っていたのです。

 そんな彼らがPACSを選んだのには特別な理由がありまして、それはI君の一族が関係していたのです。

 I君はとても熱心なキリスト教の家庭で育てられ、今でもミサなどには必ず一族で出席をしないと許されない環境なのだそう。でも、I君自体はそれほど熱心な信者ではなく、そのような一族の行動に対し、少し疑問を持っているのです。ただ、一人っ子ということと、親が高齢な事、そして代々続く名門ファミリーということもあり、家族が元気なうちは、家族に合わせるつもりなのだと。

 そんな彼があえて結婚をしないのは、フランスでは結婚と言うのはキリストの前で愛を誓うことであり、宗教色が強いから。

 自分が疑問に思っている世界に、自分の愛する人、そして子どもを強制的に入れたくない。自分が築く新しい家族は、宗教に縛られたくないと言う反発の思いがあり、あえて結婚はしないのだとか……。

 このように、PACSといってもさまざまな理由があります。

 ちなみに私も今の主人と結婚する1年前にPACSをしました。それはなぜなら、滞在ビザが欲しかったから。PACSをすることでパリに住む権利が与えられ、今の主人と生活できるようになり、そして結婚を決意。2人一緒にパリで結婚の準備をしたのです。これまた、フランス人と結婚したパリ在住の外国人にとってはよくある形の事実婚です。

 実際は、日本でイメージされる“愛があれば形式なんて!”とはかけ離れた理由で事実婚をすることが多いフランス人。ロマンチックで自由翻弄に生きているイメージの強いフランス人ですが、案外世界の中でもとても堅実的な国民なのかもしれませんね。