料理に服を着せる気持ちで器を添える

料理家でありながら、食卓のスタイリングも手がける冷水さん。大の器好きで知られ、展覧会のキュレーターを務めたり、陶芸家とのコラボレーション作品を発表したりもしています。ご自宅にある器の数を聞くと、「小さい豆皿なども合わせたら、1000はあるかも……」とのこと! ズバリ、冷水さんにとって、器の魅力とは?
「器は、料理をグッと魅力的に見せてくれるもので、食卓の風景の一部にもなるもの。器を選び、盛り付けるときは、料理に洋服を着せるような気持ちです。洋服は試着できますが、器は、実際に使ってみないと相性がわからない。だけど、テーブルやソファに比べたら、購入しやすいアイテムですよね。たった1枚のお皿が、食卓の風景をガラリと変えることもある。そういう意味で、器はとても親しみやすいインテリアだと思います」
器作家さんとの親交も深い冷水さんですが、「日ごろ使う器」と「美術品としての器」に境界線はあるのでしょうか?
「器は使うために購入しているので、そういう境界線はありません。とはいえ、高いものを使うときは、やはり気を使いますけどね(笑)。器に限りませんが、美術品としての『価値』という概念は、すごく難しいもの。高価な器も見る人によっては全く価値がないものに映りますし、リサイクルショップにあるお皿が、100年後は美術品になっているかもしれません。それを決めるのは、自分の価値観がすべてなんですよね。
ではその価値観は、どのように育まれるのか。私の場合は、とにかくたくさんの器を見て、触って、形成されたのだと思います。昔から器がとにかく好きで、海外旅行に行く際は、持って帰れないほどの作品を購入してしまうこともしばしば(笑)。美術館や展覧会にもよく足を運び、見比べる機会も多かったので、自分にとって『価値のある器』の見極め方が自然と身についたような気がします」
冷水さんにとって、「価値のある器」とは?
「言葉で表現するのは難しいのですが……空気感が強い器、そして、眺めていて気持ちがいい器です」