豆が大好きだから、たっぷり食べたい、作りたい。でも難しそう……
豆料理が上手にできるようになると、ベテラン主婦、お料理上級者って感じがしませんか?普段のお料理は苦にならないし、たいていのものは作れても、豆料理だけは妙にハードルが高かったりします。母熊も、気軽に作るようになったのは実はここ数年なんです。それまで豆料理は、市販品を買うか、義母や母の作ったものをいただくか、どちらかでした。
豆、不思議なことに歳を重ねるごとに好きになってきました。あんこにしろ、煮豆にしろ、大豆にしろ、若い頃はさほど食べたいと思いませんでした。それが最近は、できれば鍋を抱えて食べたいほどの豆ラブぶりです。

たっぷり食べたい、だから作りたい、でも難しそう。ネットで色んなレシピを眺め、何年間揺れ続けたことでしょう。だって、そのレシピによっていろいろなんですもの。戻し方、茹でこぼし方、お砂糖の量や煮方。何を信じたらいいか、ますます混乱しました。何年間も悶々とし続けたそれが、とあるきっかけで、突然ものすごく簡単に作れるようになったんです。
息子達の学校行事で聞いた、おばあちゃんの知恵
そのきっかけは、息子達(以下、兄弟熊)の学校行事でした。
もうすっかり大きくなった兄弟熊ですが、今時珍しいバンカラな男子校に通っていました。歴史ある旧い高校にありがちな、変わった学校行事が目白押しで、親もずいぶん楽しませてもらったものです。
一般的に、高校にもなると、学校行事への親の参加はがくんと減ると思います。ところが兄弟熊の出身高校はお父さんまで仕事を休んで見に行くのが珍しくありません。そのくらい親が息子の学校行事を楽しみにしている高校だったのです。
中でも異彩を放っていたのは、「40キロハイク」という行事です。春の田舎道、40キロのコースを思い思いの扮装で踏破します。もともとは戦時中の行軍演習から端を発しているようですが、今では仮装行列の様相を呈し、お祭り騒ぎです。しかしながら、春とはいえ夏日を連発するような昨今の気象条件で、全身タイツや着ぐるみなどで40キロを歩き切る、これは見た目以上に過酷なことです。
見に行っている親は、疲労困憊汗びっしょり茹でダコの如き我が子が、ふうふうと歩く姿を見るに見かねて、タオルや飲み物を差し出したりしたくもなりますが…はい、これは学校からきつーくストップがかかっております。手は出すな、じっと見守るべしと。時には涙してしまうほどの感動の光景に出会いながら、母熊は年子の二人合わせて4年間見守りました。
そんな息子達の体験をほんの少し共有できるPTA行事がありました。
うちの地域支部の恒例行事、親だけの「10キロハイク」です。紅葉の季節に息子たちの歩く40キロのコースのラスト10キロを歩いてみようという企画です。
田舎あるある、車社会の我が地域。普段は1キロだって歩きゃしませんよ。10キロなんて途方もない距離。そんな行事にガラにもなく参加して、初めておしゃべりするお母さん方ときゃっきゃわいわいと歩を進めたことが自分自身の大変良い思い出です。
その道中に美味しい豆屋さんがありました。そこの豆から膨らんだおしゃべりの中で、一人のお母さんからびっくり情報がぽろり。
「うちのおばあちゃんは、魔法瓶の中に一晩豆を入れて煮るのよ」
一緒に歩いていた母熊はそれこそ身を乗り出すように根掘り葉掘り質問しました。
「お湯に浸すだけでいいの?」
「あく抜きとかどうするの?」
「どんな豆でも平気なの?」
「味付けはいつするの?」
そのお母さんも豆についてはおばあさんに任せきりのようで、詳しくは知らなかったのですが、どうやら戻す作業を魔法瓶ですると、そのあとの豆を煮る作業がものすごく短時間で楽だということらしいんです。
よくわからないままに、えーいままよ!とトライしてみることにしました。