”名前のないスープ”が食卓を変える

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2018/08/14 12:00

書籍『365日のめざましスープ』や、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』で様々なスープを紹介しているスープ作家の有賀薫さん。肩肘をはらず、シンプルで滋味あふれるスープを作っています。有賀さんがスープを作りはじめて気がついたこととは?

重荷だったごはん作りが一変

 名前のないスープを作れるようになると、ごはん作りはとたんに楽になる。

 おうちごはんを引き受ける人にとって「今日の夕飯、何にしよう」は、大きな悩みだ。家族やパートナーがいればもちろん、ひとり暮らしの人だって、じぶんの食事は何とかしなくちゃいけない。

 食べることも料理も嫌いなわけじゃない。それでも、仕事や子育てや人付き合い、もちろん自分の趣味や勉強だってある。

 忙しい中で、毎日毎日、ちゃんとごはんの支度をするのは、けっこう荷が重い。お惣菜や冷凍品、便利なものはたくさんあるけれど、続けば飽きるし、どことなく罪悪感もある。私自身、そう感じ続けながら、毎日毎日(ある程度がんばって)ごはんを作ってきた。

 スープを作ると、ごはん作りが楽になる。そのことに気がついたのは、ごく最近のことだ。きっかけは、朝寝坊の息子だった。

 受験の直前なのに、ちっとも起きられずに朝寝ばかりしている息子を放っておくか、どうしたものかと考えあぐねて、ある朝「おいしいスープができたよ」と声をかけてみたら、面白いほど、すっと起きた。母に似て、食いしん坊の息子なのだ。

 そこから私のスープ作りははじまった。

 受験の願掛けみたいな意味も込めつつ、毎日続けていたのだが、朝のスープをiPhoneで撮ってTwitterやInstagramなどのSNSで発信していたら、面白いね、おいしそうだねと、なんだか周囲の人がほんわかしてくれて、それはそれで料理好きな私にとってはちょっぴり嬉しく楽しいことだった。

スープは自由で、失敗しにくい

 そうやってスープ作りを続けているうちに、私はあることに気がついた。スープってすごく「ラク」な料理だな、ということ。

 スープ、というと、大きな鍋で、何種類もの野菜や肉の骨を、何時間もかけてコトコトと煮出して、時間も手間もとってもかかるもの。そんなイメージを持っている人は多い。

 でも、私のスープはもっとずっと簡単だ。

 朝は時間がないから、あまり何種類も材料を出すのも使うのもいやだし、ステップや調味料が多いのも困る。冷蔵庫の野菜を1種類か2種類か3種類、ザクザク刻んでオイルで炒めて、水を差して、塩を加える。

 和風にしたかったら、野菜を蒸し煮して、水に昆布をつけておいただしを足して、醤油か味噌で味つけする(味噌で味をつけたものは、要するに味噌汁だ)。野菜を煮て、少し水かミルクを足してハンドブレンダーでガーッとやれば、おしゃれなポタージュ。

 毎日作るうちに、材料を減らし、それまで使っていただしや調味料も次々抜いて、私のスープはだんだんシンプルになっていった。そして、それでもちゃんとおいしかった。

 なあんだ、これでいいの?

 このスープに肉や魚を加えていくとボリュームが出て、夜ごはんのメインディッシュとしても成り立つ、立派なおかずになることにも気がついた。

ひき肉を使った、白菜のスープ
ひき肉を使った、白菜のスープ
かぶのポトフ
かぶのポトフ

 2人か3人前を、ものの10分か15分でササッと作る手軽なスープは、本当に苦もなく作れる。多少煮えにくいものがあって、20分か30分かかるとしても、最初に仕込んでしまえば、あとは鍋を火にかけて放っておけばいい。

 炒め物や揚げ物みたいに油が飛び散ることも、下ごしらえをあれこれする必要もない。具材は歯ごたえがあってもやわらかくてもおいしいし、ちょっと味付けが濃かったな、と思ったら薄めてもいい。

 要するに、失敗しにくい。

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