翻訳家でお菓子ブログを主宰する森嶋マリさん。「勝手にタコス応援団」という森嶋さんの連載第二回目は、「タコス」のお話。なんだかタコスが食べたくなってきます!

タコス、最近食べましたか?

 こんにちは! お菓子ブログ〈Single KitchenでSweetsを〉のmarinこと森嶋マリです。

 突然ですが、以前から不思議でならないことがあります。

 日本では、なぜ、タコスがさほど一般的ではないのでしょう?

 もちろん、タコスがどんな食べ物かは、たいていの人がご存じのはず。それなのに、「よく食べますか?」と尋ねると、「あまり食べないな~」とおっしゃる方がほとんど。大きなスーパーマーケットに行けば、タコスが簡単に作れるタコスキットも置いてあるのに、いまひとつメジャーになりきれないタコス。タコス押しの私としては、いつもちょっとがっかりしています。

 タコスが食べられるレストランも数少ないし、気軽に食べられるファストフード店もほぼ皆無。そんな状況ではメジャーになりようがないのかもしれません。

なぜかいまひとつメジャーじゃない?!タコス
なぜかいまひとつメジャーじゃない?!タコス

 タコスの最大手ファストフード店と言えば、アメリカではいたるところで見かける「Taco Bell(タコベル)」ですが、1980年代にいったん日本に上陸したものの、どういうわけか、あっというまに撤退。その後、2015年に再進出して、いまは渋谷など東京の都心に数店舗ありますが、まだまだ全国展開にはいたっていません。“勝手にタコス応援団”の私としては、ぜひともがんばっていただきたいと、エールを送りたいところです。

 というわけで、今回はタコスを思いきり応援させていただきます。

私がタコス好きになったきっかけ

 なぜ、私がこれほどタコスを押しているのか、不思議に思われている方もいらっしゃるかもしれません。

 タコス好きになったきっかけは単純明快。野菜がたくさん食べられるから、という理由でした。

 かつて、アメリカの南西部の大自然に憧れた時期があって、暇を見つけては何度も旅したことがありました。

 おしゃれなレストランがある大都会であれば、野菜たっぷりのヘルシーな食事もできますが、私が目指したのは、雄大な自然が眺められる国立公園とその近辺の小さな町。当時、そういう町で食べられたのは、いかにもアメリカンな食事でした。具体的には、ステーキ、ハンバーガー、ピザ、パスタ。つけあわせは、見ただけでおなかがいっぱいになりそうな山盛りのフライドポテト。もちろんサラダも注文できましたが、メインディッシュとフライドポテトを食べたら、サラダを食べるおなかの余裕はありません。

 ならば、フライドポテトを残して、サラダを食べればいいんじゃない? たしかに、そうですね。ときにはそういうこともしちゃいました。でも、そもそもが貧乏性なのか、戦中育ちの親から「食べ物を残してはいけません」としつけられたせいなのか、たとえ山盛りのフライドポテトでも、できるだけ食べなくちゃと、妙な義務感を抱いていたのです。

 そんな食事が続いたときの強い味方が、タコス。肉やチーズと一緒にレタスとトマトがたっぷり入ったタコスを食べるとようやく、「野菜不足解消!」という気分になれたのでした。

 そんなふうにして、何度目かのアメリカ大自然の旅で、私のタコス好きを決定づける一品に出会いました。

味の決め手は手作りサルサソースだった!

 私のタコス好きを決定づけた一品。それはある牧場で食べたタコス。その牧場の女主人の手作りタコスは、それまで食べていたものとは、まるでちがうものだったのです。

 まずタコスの具を包む皮の部分・トルティーヤからしてちがっていました。トルティーヤにはトウモロコシの粉で作るものと、小麦粉で作るものの2種類がありますが、その牧場で出てきたのは、小麦粉を使ったフラワートルティーヤで、しかも油で揚げたもの。かすかにふっくらした揚げパンのような、インドのナンを揚げたような、不思議なトルティーヤでした。

 さらに女主人が「手作りなのよ」と誇らしげに勧めてくれたのが、サルサソース。細かく刻んだ完熟トマトが味の決め手の、それはもうフレッシュなソースでした。

 それまでさんざんタコスを食べていながら、第一の目的が野菜不足解消だった私は、サルサソースのことはほとんど気にも留めていませんでした。そんなわけで、まさに目からうろこの気分。そのときはじめて、サルサソースがあってこそのタコスなのか! と気づかされたのでした。

 そう、タコスの要はトルティーヤとサルサソース。そのふたつが肝心で、あとは何をはさもうとタコスはタコス。日本ではタコミート(スパイスを加えて炒めた挽肉)をはさむものと思っている方も多いようですが、実は具はなんでもいいんです。

何をはさもうとタコスはタコス
何をはさもうとタコスはタコス

野菜も肉も好きなだけはさめるタコス

 その後も、機会があればすかさずタコスを食べていた私ですが、あるときもう一度驚きの真実を知ることになりました。と言うと、ちょっと大げさですね。実は私、それまでずっと自分が食べているタコスを、メキシコ料理だと思いこんでいたんです。

 いえ、もちろんタコスはもともとメキシコの食べ物です。でも、アメリカで食べていたタコスは、実はテックスメックスという料理(テキサス風メキシコ料理)だったのです。

 テキサスといえばアメリカ南部の州ですが、かつてはメキシコの一部でした。その後、1836年にテキサス共和国として独立して、1845年にアメリカ合衆国に併合されたという歴史があります。アメリカでありながら、メキシコと深いつながりがあることを思えば、料理が独自の進化を遂げていったのも、うなずけます。

 メキシコのタコスとはちょっとちがう、テックスメックス料理のタコスの特徴は、ハードシェルと呼ばれる硬めのトルティーヤや、具に千切りのレタスやチーズを使うこと。まさに私が野菜不足解消として食べていたタコスでした。

 テックスメックス料理には、ほかにも有名なものとしてチリコンカーンがあります。日本では某コンビニエンスストアのヒット商品として知られるブリトーも、やはりテックスメックス料理です。

テックスメックス料理で有名なのはチリコンカン
テックスメックス料理で有名なのはチリコンカン
チリコンカンでタコスもおいしい
チリコンカンでタコスもおいしい

 さらに、テックスメックス料理のタコスが日本に伝わって、タコライスが生まれました。タコライス、ご存じでしょうか? ご飯の上に、タコミート、細切りのチーズ、レタス、トマト、サルサソースをのせて食べる沖縄の料理です。いまは、沖縄だけでなく、日本各地で食べられるようになっていますね。

 インドのカレーや中国の餃子が、日本で独自の進化を遂げたように、タコスも日本のおいしいお米と出会って、進化したと言えそうです。そう思うと、タコス押しの私としては、感慨ひとしお。食文化の不思議を実感しつつ、なんだかわくわくしてきます。

 メキシコ、テキサス、沖縄がタコスのキーワードだとしたら、共通するのは? もしかして「暑い場所」でしょうか。ということは、タコスはいまこのとき、夏にぴったりの料理かもしれません。

 野菜も肉も好きなだけはさめるタコスは、普段の食事にも、ちょっとしたパーティーにも、家族や仲間で楽しむキャンプにもうってつけです。おまけに彩りも鮮やかなので、インスタ映えもしますよ。

 タコス初心者なら、まずはタコスキットや市販のトルティーヤを試されるのもいいかもしれません。タコス上級者なら、手作りトルティーヤに挑戦するのもいいですね。いずれにしても、サルサソースはぜひとも手作りで。材料を切って混ぜるだけのお手軽さですから、瓶詰めのサルサソースを買いにいくより早いかもしれません。

 それでは、おいしいタコスをお楽しみください!

フレッシュサルサソースと鶏むね肉のタコス

サルサソース

※サルサ・メヒカーナという基本のソースです。

【材料(4人分)】

 完熟トマト 2個

 タマネギ(できれば紫タマネギ) 1/4個

 ピーマン(またはパプリカ) 1/4~1/2個

 生または酢漬けのハラペーニョ(なければ乾燥赤唐辛子) 1/2~1個

 ライム(なければレモン)の搾り汁 1/2個分

 塩 少々

 コリアンダー(お好みで) 少々

【作り方】

 1.トマト、タマネギ、ピーマンを大きめのみじん切りにする

 2.ハラペーニョの種を取り、みじん切りにする

 3.1と2を合わせて、ライムの搾り汁、塩をくわえて、よく混ぜ、冷蔵庫で1時間以上寝かせる

 4.器に盛ったら、お好みでみじん切りにしたコリアンダーをちらす

 *ハラペーニョはとても辛いので、慣れていない方は控えめに。辛いものが得意なら、お好きなだけどうぞ。

鶏むね肉のタコス
鶏むね肉のタコス

タコス

【材料(4人分)】

 鶏むね肉 1/2枚

 トルティーヤ 8枚

 レタス 3枚ぐらい

 細切りチーズ(生食用) 大さじ4

 サルサソース 上記のレシピ

【作り方】

 1.鶏むね肉を茹でて、食べやすい大きさに裂く

 2.トルティーヤを熱したフライパンで焼き(軽く焦げ目がつくぐらいに両面を焼きます)、布巾に包んで蒸らしておく

 3.レタスを千切りにする

 4.トルティーヤの上にレタス、鶏肉、チーズをのせ、サルサソースをかけたら完成

 *トルティーヤはコーントルティーヤがお薦めですが、慣れていない方はフラワートルティーヤのほうが食べやすいかもしれません。

 *コーントルティーヤは冷めると固くなるので、焼き上がったら、食べる直前まで布巾に包んでおきましょう。

 *フラワートルティーヤは固くなりにくいので、ふきんで包まなくてもOK。

フラワートルティーヤの作り方

 【材料(10枚分)】

 強力粉 125g

 塩 小さじ1/2

 植物油 大さじ1/2

 水 75gぐらい

 【作り方】

 1.ボウルに強力粉、塩、植物油を入れて、ホイッパーなどで混ぜる

 2.水を少しずつくわえて、軽く捏ねる(耳たぶぐらいのやわらかさになるように、水の量は調節する)

 3.生地がまとまったら、10等分して、丸める

 4.台の上にクッキングシート敷き、丸めた生地を置き、もう1枚のクッキングシートをかぶせ、麺棒で生地を丸く、薄く伸ばす

 5.熱したフライパンで両面を焼く

 (4と5を10枚分繰り返す)